公正・中立なFPは存在しない

「公正・中立」なFPは存在しない

この文章の結論

公正・中立を主張しても確かめる術なし

FPにおける「公正・中立」は商品販売者側ではなく、どちらかといえば消費者側に立ち、場合によっては方向変換を促す「状態(立場)」のことで、最も相談者が期待しているFPと言えるだろう。

日本では多くの保険募集人がFPの資格を保有している。保険を売る立場である以上、「公正・中立」であることはほぼ不可能で、実際に「公正・中立」を公言することは禁止された。「禁止された」としたのは、平成28年5月29日に保険業法が大きく改正され、保険募集の在り方が見直されたが、それ以前は、「公正・中立」を普通に使っており、誤解を与えていたのだ。

それはさておき、今回はFPの立場における「公正・中立」について、普段から感じていることを伝えたい。

「公正・中立」な状態を保てるか

前述の通り、消費者の立場で物事を考え、ライフプランを作成し、アドバイスをする。商品販売による売り上げや投資信託などの販売手数料目的でないアドバイスであれば相談者にとって信頼できるものになるだろう。

しかしFPも一個人に過ぎず、あらゆる分野に精通するのはまず無理だ。基本的には相談者の考え方や価値観、現在の悩み・不安を聞き、将来の目標や夢を実現するためにはどのような方法がいいか、その解決策を探り、アドバイスする。業界の垣根を越えて多方面から考えられるため、個々の環境と同じといえる。

たとえば住宅を購入しようと思い不動産販売会社へ行って相談しても、基本的には不動産のことしかわからない。もちろん、様々なことをアドバイスしてもらえるが、不動産分野以外の知識はどうしても薄くなり、あまり顧客の立場で対応すると不動産が売れなくなってしまうことも考えられる。

実際に住宅を購入しようとする場合、住宅についてだけでなく、住宅ローンや保険はもちろん、家計の状況を把握するために、社会保障制度や税制、物価上昇率など様々な知識が必要となる。

話がそれたが、ほかの分野の専門家(士業)との協力が必要なため、共同する専門家も公正・中立かを見分ける必要がある。

たとえば裁判をすることのみを収益としている弁護士がいた場合、裁判をしないことを勧めることができるか、さらに無駄な裁判をしていることをFPが見抜けるかどうか、簡単ではないだろう。

また多くの情報に対しても一つひとつ公正・中立かを判断できる力が必要である。ネットで簡単に必要な情報を得られる状況にある。特定の人によって発信された情報自体、なんらかのバッファがかかっている。多くの情報は説得力があり納得できることも多いが、果たして素直に受け入れていいか、判断しなければならない。

専門家が発信する情報だけでなく様々な情報に対して公正・中立かどうかの判断をする力はFPの試験に合格しただけでは身につかない。おそらく多くの情報に触れ、発信元を確認し、その情報の意図を考える癖を付けなければ無意識のうちにFP自身も情報に流されてしまうだろう。

「公正・中立」な情報はインパクトに欠ける

主張がはっきりしている情報は読みたくなる。たとえば「生命保険の加入は家計の状況に合わせて検討しよう」という情報より、「生命保険など不要」「保険に入らなければ大きなリスクを負う」など極端な情報の方が読みたくなるのではないだろうか。

「保険に入るべきだ」という立場は販売者側からは法令の関係上、明確に強調することはできないため、保険に関して言えば、「保険は無駄だ」という主張が相対的に目立つだろう。「保険加入推進論」を唱える販売者側も、「がんは2人に1人がかかる」という正しいが断片的な情報のみを伝えることで危機感をあおり、暗に入るべきだという情報を発信している。

不動産投資を勧める人はどうだろう。不動産投資を勧める本が多く出版されており、仕事柄なるべく読むようにしているが、いずれも不動産投資をしたくなる客観的な根拠に乏しい。

不動産投資を勧めるために比較されるのが株式や投資信託である。株式や投資信託のデメリットを強調し、不動産投資を勧める。ひどい場合には、株式の信用取引だけをピックアップし、株式はリスクが高く変動が激しいので、安定している不動産投資の方が優れているという論法だが、この時点で読む気がなくなる。

筆者を確認すると、不動産投資のコンサルタントだったりする。「不動産投資はいいものだ」「不動産投資が最も優れている」と結論付けるためにほかのデメリットを引き合いに出しているに過ぎない。このような説得力に欠ける書籍だが、「誰でも簡単にできる不動産投資」「年収〇億円のサラリーマン大家」(タイトルは適当)というタイトルは目立つため、少しでも関心があれば読みたくなるのではないだろうか。

しかも書かれている数値は収入であり、利益ではない。「不動産投資をしている人がたくさんいる」「大きな収入を得ている」など肝心なところで漠然としていることが多い。不動産投資を否定しているわけではなく、説得力のある文章か、本当に不動産投資に魅力があるか、よく読むと釈然としないのである。必要であれば不動産投資をすればいいし、不動産投資のような値動きのするものにお金を使わないという方針であればそれでいい。

なお投資をする前に、ライフプランを立てるなどしっかりと資金計画を立てるべきである。

「公正・中立」なFPが必要な人

保険募集人が保険の営業をする上で説得力を持たせるために、「勧めたい保険に自ら加入する」方法がある。相談者が加入するかどうか悩んでいるときに、「実は私も加入しているんです」と一言添えるだけで説得力は増すだろう。また「多くの人がこの保険を選んでいます」も同じような効果がある。これらは本当に説得力があるのだろうか。

これらの営業トークは迷っている相談者に決断させるのに役に立つ。基本的にはその一言で商品の良さを認識したのではなく、その前の商品説明ですでに魅力のある商品であることは理解していただろう。少し話がそれるが、この時の「迷い」は重要だと考えており、なぜ「迷う」かというと、何となく根拠に欠けているからである。はっきりしない不安があるため「迷い」が生じるが、本来ならその「迷い」を払拭するために家計の状況を振り替える必要があるが、そのことには気づかないだろう。

さて「勧めたい商品に自ら加入する・購入する」という行為は、あくまでその前段階の対応が重要であって、前面に押し出す営業ツールではないが、ここにこだわる人もいる。しかも「勧めるならなぜ自ら加入していないのか」ともっともらしいことを言う人がいるが、そもそも個々の状況や考え方に合わせてアドバイスするFPが一様に同じ商品を勧めるのはすでに販売者側の視点であり、「公正・中立」とは言えない(そもそも特定の商品を勧めると法令違反になる)。FP自ら加入したり、商品を購入しなければアドバイスできないなら、これもまた「公正・中立」とは言えない。

では、「公正・中立」なFPが必要な人はどのような状況の人だろうか。

これはどのようにしたらいいか迷っている人である。

保険に加入するか迷っている、株式投資や不動産投資をするか迷っている、このような状況の人が、保険代理店や証券会社、不動産投資会社に行けば情報の「いびつさ」に気づかない可能性がある。保険が必要だと判断すれば様々な保険代理店で相談をし、比較検討する段階に入るが、「公正・中立」なFPはその前に相談すべき専門家である。最終的には、常に最新の情報が入ってくる保険のプロに相談しなければならない。不動産投資をすることを決心したら、不動産投資のプロに相談すべきである。

どうしても情報の非対称性(消費者は販売者より情報が少ない)により、相談者にとって最適な方法を選択できない可能性があるためだ。

必ずしも人間は効率的なお金の使い方をできるわけではない

生活をしていると様々な場面でお金に関する知識が必要となるが、なるべく最適な方法を選んでいるつもりでも、第三者から見ればそうではないことがある。生命保険の加入に関しては調べ上げ、保険料の割には大きな保障を得られたとしても、住宅購入では勧められるがままに選択しているかもしれない。

第三者であるFPは、相談時にお金の使い方についてアドバイスすることはできるかもしれないが、毎日の消費活動をチェックするのは難しい。相談者が実行に移すことができなければ、アドバイスの効果はないことになる。

「公正・中立」なFPになるために必要なFP以外のスキル

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